離婚、婚姻費用などで調停を申し立てると、裁判所から第1回目の調停を行う日時の連絡を受けます。調停を行う日のことを「期日」といいます。弁護士に依頼している方も、そうでない方も、最初の調停は緊張しますよね。それでは、調停期日ではどういったことに気を付ければよいのかなどを弁護士が解説します。
目次
調停とは
裁判所の手続きと聞くと、ドラマでみるような法廷に立ち、緊迫した雰囲気の中、裁判官や弁護士からたくさんの質問を受ける・・・と言ったイメージを持たれる方も多いと思いますが、調停は全くそのような手続きではございません。調停は話し合いの手続きです。
調停には、調停委員の方が2名選ばれ(通常、男性1名女性1名のペア)、その調停委員を介して、相手方との話し合いを進めていきます。調停委員は裁判官ではありません。原則として40歳以上70歳未満の人で、弁護士などの専門家のほか、社会生活上豊富な知識経験を有している方などから選ばれています。
調停は、調停室という会議室のような部屋で行われます。
相手方と直接顔を合わせることは基本的にはありません。離婚など身分関係にかかわる調停については、最後の調停調書の読み上げの際に双方当事者が同席することになっています。ただ、必ずしも同席が強制されるというわけではなく、事案によっては当事者が同席することなく別々に対応するということもあります。
調停当日の流れ
事前に裁判所から第1回期日の日時の連絡を受けます。調停の申し立て段階から弁護士に依頼している方は、その弁護士を通じて第1回の日程調整を行います。相手方の立場の方は、裁判所から呼出状を受け取っているはずですので、その書面をご確認ください。
事案によりますが、申立人と相手方とでは指定される時間が異なっているはずですので、顔を合わせることは少ないです。ただ、駐車場やエレベーターなどで偶然会ってしまう可能性はありえます。DV事案などの場合は、事前に裁判所や弁護士に相談して対応しましょう。
当日は、指定された時間の前に余裕をもって到着しておくことをお勧めします。新潟家庭裁判所の場合、敷地内に駐車場がありますので、車で来る方はそちらにお停めください。新潟家庭裁判所は、1階の玄関からまっすぐ行ったところにエレベーターがあります。そのエレベーターで4階まで上がり、エレベーターを出て右側に曲がると書記官室があります。この書記官室は入口が開いていますから、中に入って、受付の対応をする職員にお名前と時間をお伝えください。
裁判所職員から、待合室と調停室の番号を伝えられますので、指定の待合室で待機してください。
調停委員から呼び出しがあったら、調停委員の案内にしたがって調停室にお入りください。
最初に、調停委員から人違いを防ぐために身分確認があります。免許証等の提示にご協力ください。
次に、調停委員から調停制度の説明があります。弁護士が同席している場合は割愛することが多いです。
調停委員から一方的に質問を受けるというわけではなく、調停申立書や提出した証拠書類などに沿って、一つ一つ事実関係を確認したり、これまでの経緯などを説明したりという流れです。
最初は緊張すると思いますが、調停委員の方もプロですので、安心してお話しください。「これは発言すると負けてしまう」等はありませので、普通にお話しいただければよいかと思います。
持ち物、服装など
服装は自由です。常識的な服装であれば問題ありません。スーツを着なければ印象が悪い、といったこともないです。
持ち物は、第1回期日の際には身分確認を求められることがあるため、免許証や保険証、マイナンバーカード等をお持ちください。
それ以外に必ず持ってこなければならないものはありませんが、以下のものをお持ちになることをおすすめします
①裁判所から届いた呼出状など
第1回期日を指定する呼出状などは、事件番号(令和6年(家イ)第●号など)や当事者名が記載されているので、裁判所の受付で見せると案内がスムーズになりますから、お持ちいただく方がよいです。
②裁判所に提出した書類一式
裁判所に提出した申立書、証拠などはお持ちいただく方がよいです。調停委員から質問を受けたときに回答しやすいです。
③印鑑(認印で構いません)
相手方から書類が提出されているときなど、その受取のために押印が必要な場合があります。念のため持参いただくとよいでしょう。
④手帳、スケジュール帳
調停は1回で終わらず、2回目、3回目と回数を重ねることが多いです。通常は1か月ごとに開催することが多いので、次回期日を調整する際にスケジュールが確認する必要があります。スマートフォンのアプリを利用する場合は、スマホを取り出すときにスマホを利用することを調停委員に確認することが望ましいです。
⑤メモ、ノート
調停では様々なことが話し合われます。相手方の主張や要望をその日に調停委員を通じて聞くこともあります。次回までに解決すべき課題や宿題が出る場合もあります。こういったことはきちんとメモをした方がよいです。
調停の際に意識してほしいこと、心構え
調停委員の方は、その日に初めて申立書などの書面を読みます。申立人、相手方ともに初めて顔を合わせます。
当事者や関係者はどういったキャラクターや性格なのか、どちらの言っていることが事実に近いのか、夫婦関係に何があったのか・・・など、様々な事情を全くわからないまま調停に臨みます。
そのような調停委員に対して、過去にあったできごとや調停申立書などに書かれた内容を全て把握していることを前提に話をすることは、適切な態度とは言えません。
調停を申し立てるということは、当事者間が調停外で解決できなかった対立の間に入ってもらうということですから、「自分の主張を理解しない調停委員が悪い」という振る舞いは望ましくないでしょう。
調停委員との相性が合わないことがありうるかもしれませんし、自分の主張がなかなか理解されないときもあるかもしれませんが、調停委員も人間ですので、わかりやすく説明を繰り返すことが必要な場合もあります。
よくある質問
Q 不安なので家族や友人と一緒に行ってもいいですか?
A 待合室までであれば、付き添いは可能です。実際に、当事務所で担当した案件でも、親御さんが待合室まで付き添われたケースがございます。
ただし、調停室には当事者と代理人弁護士しか立ち入ることができませんので、付き添いに来られた方は待合室で待機いただきます。
なお、心身の疾病等でどうしても付き添いが必要な場合等については、裁判所の個別の判断になると考えられますので、裁判所の調停係にお尋ねください。
Q 子ども(乳児)を連れて行ってもいいですか?
A 大丈夫です。新潟家庭裁判所でもベビーベッド等が備え付けられている部屋があります。あらかじめ裁判所に連絡をしておくことで、このような部屋の確保等の対応をしてもらえる場合があります。
もっとも、調停は待ち時間がとても長くなります。この待ち時間はお子さんにとってはとても負担です。
また、調停委員にお話しするときも、できるだけ漏れなくお話しをする必要があります。さらには、弁護士に依頼している場合は、合間の時間に打ち合わせを行って次の対応を検討していくということもよくあります。お子さんのお世話をしながらですと、十分な検討等ができないこともあります。
こういったことから、可能であれば託児施設や親せき等にお子さんを預けて参加されることが望ましいです。
Q 調停の様子を後で確認したいので、録画や録音をしてもよいですか?
A 絶対にダメです。裁判所敷地内では録画・録音は禁止されています。映像や音声のライブ配信も禁止です。手書きでメモを取ることは差支えないので、メモや筆記用具をお持ちください。
調停に弁護士が参加するケースが多い!
「弁護士=裁判」というイメージを持っている方も多くおり、調停は弁護士に依頼せず自分でやるものとおっしゃる方もいらっしゃいます。
実は、離婚関係の調停事件の約60%に弁護士がついているとされます。申立人と相手方の双方についている場合もあれば、申立人相手方の片方のみついているケースもあります。
調停を弁護士に依頼するメリット
多くの事件では弁護士が調停に参加しています。当事務所でも数多くの調停事件を解決してきました。このような立場から、調停事件を弁護士に依頼するメリットをご紹介します。
①有利に調停を進めることができる
調停は、調停委員を中心として、申立人と相手方との双方の主張を聞き、解決を目指していきます。大切なことは、調停委員に対して、ご自身の主張や心情をきちんと理解してもらうことです。特に、離婚は、夫婦が出会った頃から調停期日に至るまで様々な出来事があったはずです。このような長期間にわたる出来事をご自身だけでわかりやすくポイントを押さえて主張することはとても難しい作業です。
また、離婚はその離婚条件として、親権、養育費、面会交流、財産分与、年金分割など様々な事柄を議論しなくてはなりません。経験がなければ、これらを整理していくことは困難です。
弁護士は、出来事や当事者の主張の争点を法律的な観点から適切に整理し、調停委員に対してわかりやすく主張や心情を伝えることができます。
調停委員に対してこちらの主張を理解してもらえるということは、それだけで調停の進行においてアドバンテージがあると言えます。
②不安を打ち消すことができる
よく離婚相談の中で、「相手は口が上手なため、調停委員が言いくるめられるのではないか。」、「相手方は外面がよいため、調停委員には好印象を与えている。」、「自分は話が下手だから、調停委員にうまく説明できない。」、「何を言えばいいかわからない」「調停委員がどのような意図なのかわからない。」、「調停委員に言われたことに、『違います』とはっきり言うことができない」などの相談を受けます。
このような不安な心境では、ご自身の想いをきちんと調停委員に伝えることができなくなってしまいます。
弁護士法人美咲総合法律税務事務所の弁護士は数多くの調停事件を解決してきました。経験値はとても重要ですが、相談に来られる方にとって、離婚は初めてであることが大半です。経験豊富な弁護士に任せることで、依頼者の方に代わってきちんと弁護士が対応してくれますので、不安を打ち消すことができるのです。
③有利、不利の判断をタイムリーに行うことができる
調停では、調停委員から相手方の主張を聞き、その場で判断しなければならない場面があります。
また、調停条項を確認する際も、その場で調停条項の内容を理解し、この内容で成立させてよいかどうかを回答しなければなりません。
しかし、弁護士に依頼していない方は、このような咄嗟の判断を適切に行うことができないことが多くあります。実際に、調停成立後に「このような調停条項になったのですが」と相談に来られる方がいらっしゃるのですが、「なぜこのような不利な内容で合意したのか」と驚くことがあります。弁護士に依頼していなかったために、その場で適切な判断ができなかったのでしょう。ひとたび調停が成立してしまうと、たとえそれがあなたにとって不利益な内容であっても、覆すことはできません。
調停委員や裁判所は、あなたの味方ではないのです。あくまで中立的な第三者です。場合によっては、調停委員は、調停を成立させるために、本当はあなたにとって不利益な内容であっても合意するよう説得してくることもあります。
弁護士に依頼して調停に同席してもらえれば、ある判断を求められたときに、瞬間的に有利か不利かを判断することができます。
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弁護士法人美咲総合法律税務事務所では、数多くの離婚調停事件を解決してきた実績があります。少しでも調停に不安を感じられる方や、これから調停を利用したいという方も、初回相談は無料ですので、お気軽にお問合せください。