夫との離婚を考え始めたとき、「お金がなくて生活できないかも」「子どもの教育費はどうしよう」といった不安に襲われる方は少なくありません。特に、専業主婦やパート主婦として家計を支えてきた方にとっては、ご自身の収入の少なさが大きな壁に感じられることもあるでしょう。
この記事では、専業主婦やパート主婦の方に向けて、特に離婚後の経済的な問題について解説します。
目次
専業主婦・パート主婦が離婚するまでの流れ
離婚には大きく分けて以下の3つの方法があります。
協議離婚
夫婦で話し合い、合意の上で離婚届を提出する方法です。特にお子さんがいらっしゃる場合は、お子さんの「養育費」を支払ってもらう必要があります。この養育費の金額などを口頭で約束しただけですと、万が一支払われなかった場合に合意した内容を証明する方法がありませんから、法律的な手段により確保することができないリスクがあります。そこで、「公正証書」を作成することをおすすめします。
「公正証書」とは、公証人と呼ばれる実質的な公務員が作成する公文書で、当事者の依頼に基づき、契約や遺言などの法律行為の内容を証明する効力があります。特に、強制執行認諾文言といい、万が一支払いが滞った場合に強制執行を受けても異論がない旨を記載することで、給料や預貯金口座等の資産を差し押さえることができます。
公正証書を作成するために必要な費用は以下のとおりです。
| 合計額 | 手数料 |
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超500万円以下 | 11,000円 |
| 500万円超1000万円以下 | 17,000円 |
| 1000万円超3000万円以下 | 23,000円 |
| 3000万円超5000万円以下 | 29,000円 |
| 5000万円超1億円以下 | 43,000円 |
上記の手数料の計算方法は、一つの公正証書の中に、養育費、財産分与、慰謝料その他のお金の支払いなどを定めることが多いですが、それぞれの内容ごとに手数料を計算し、その合計額が手数料額になります。ただし、養育料の支払は、支払期間が長期にわたる場合でも、10年分の金額が上限となります。
公正証書で作成する場合の難点は、「夫婦でどのような公正証書を作成するのかを話し合わなければならない」という点です。そもそも話し合いすらうまくいかなくなっている状態である中で、多岐にわたる離婚条件について冷静に話し合うことは容易ではありませんし、非常にストレスです。
公正証書を作成するまでの手続きも大変です。まず夫婦間で離婚条件を話し合い、合意した内容をまとめた案を作成します。その後、その案文を持って最寄りの公証役場に連絡・予約し、面談日を指定して夫婦(またはそれぞれ)で公証人と打ち合わせを行います。打ち合わせで内容を確定させ、指定日に再度公証役場に行き、署名・押印を行い、公正証書として完成させます。このような流れが非常に大変で手間であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
調停離婚
夫婦間の話し合いで合意に至らない場合、家庭裁判所の「調停」を利用する方法です。調停委員を交えて、冷静に話し合いを進めます。
裁判官と民間から選ばれた男女の調停委員(通常2名)が、双方の言い分を聞き、中立的な立場で解決策を探ります。裁判所と聞くと恐いイメージを持たれる方も多いかと思いますが、話し合いを行うことが内容ですし、また、夫婦がそれぞれ別々に調停室に入ってお話をしますから、直接顔をあわせる心配はありません。
| 内容 | 費用 |
| 収入印紙 | 1,200円 |
| 郵便切手 | 800円(内訳:180円×1枚、110円×5枚、10円×7枚)※新潟家庭裁判所の場合(2025年9月現在) |
| 夫婦の戸籍謄本取得費用 | 450円程度 |
| 年金分割のための情報通知書取得費用 | 1,200円 |
調停のメリットは、第三者が話し合いに介在してくれるため合意に至る可能性が高まるということと、話し合いがまとまる場合(調停成立といいます)、調停調書という公的な力のある書面を裁判所が発行してくれる点です。調停調書は基本的に公正証書(強制執行認諾文言付)と同じ効力がありますから、万が一、相手方が合意内容を守らない場合には強制執行などの法的手段で対応することができます。
離婚調停のデメリットとしては、①解決まで長期になる場合があること、②調停委員の力量や性格、相性によって解決内容が変わるリスクがあること等があげられます。調停は基本的には1ヶ月に1回の頻度で開催されます。1回あたり2〜3時間程度が多いです。その回で決めきれなかった内容は、次回に持ち越します。そのため、長期になってしまう場合があります。また、調停委員の経験値や性格などはさまざまであり、また、相性などもありますから、うまく話し合いが進まない場合があることは否めません。
裁判離婚
調停でも合意に至らない場合に、裁判所に離婚を認めてもらう方法です。
専業主婦・パート主婦で、お金が心配。離婚しても大丈夫?
法律は、これまで家庭を支えてきた専業主婦やパート主婦の権利を保護するための制度が用意されています。離婚後も安心して生活できるよう、「財産分与」「養育費」「年金分割」などの制度を利用することで、経済的な基盤を築くことが可能です。
別居中の生活費「婚姻費用」とは?
離婚を前提に別居を始めたとしても、離婚が成立するまでの間、収入の多い配偶者は、収入の少ない配偶者に対して生活費を支払う義務があります。これを「婚姻費用」と言います。生活費には、住居費、食費、光熱費、子どもの学費などが含まれます。婚姻費用は、話し合いで決まらない場合でも、裁判所が定めた基準に基づいて請求できます。
婚姻費用をどれくらい請求できるのかについては、こちらのページで計算ができます
離婚時に取り決めるお金に関する項目について
離婚時に取り決めるお金に関する重要な項目は、主に以下の3つです。
財産分与とは何ですか?
夫婦が結婚している間に協力して築き上げた財産(預貯金、不動産、生命保険、車など)を公平に分ける制度です。名義が夫になっていても、専業主婦として家事や育児に専念し、夫の仕事を支えてきた貢献は、財産形成に寄与したものとして評価されます。このため、財産は原則として2分の1ずつに分けるのが基本となります。
子どもの養育費はどうなりますか?
養育費は、離婚後も子どもが健全に成長するために、子どもを育てていない側の親が負担する費用です。養育費は子どもの権利であり、親の義務です。裁判所の定める算定表に基づいて、お互いの収入や子どもの人数・年齢に応じて金額の目安を算出することができます。公正証書を作成することで、支払いが滞った場合の強制執行も可能になります。
養育費をどれくらい請求できるのかについては、こちらのページで計算ができます
年金分割とは何ですか?
年金分割は、離婚した際に婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬)を夫婦で分割し、それぞれが将来受け取る年金額を調整する制度です。専業主婦(第3号被保険者)の場合、夫の厚生年金記録を最大2分の1まで分割することができます。これにより、老後の生活資金を確保できます。
行政の支援について
離婚後に子どもを育てる親に公的な支援制度が用意されています。その主なものをご紹介します。
国の制度
②ひとり親控除
③母子父子寡婦福祉資金貸付金
④新潟県の制度
新潟県の制度は、県のホームページの「ひとり親家庭支援」関連ページで確認できます。
⑤ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭等就業・自立支援センター
新潟市の制度
1. 養育費履行確保支援事業
公正証書等の作成費用や、養育費保証契約の費用の一部を補助する制度です。
2. ひとり親家庭等日常生活支援事業
家事や育児の援助が必要な場合に、ヘルパーを派遣してくれる事業です。
3. ひとり親家庭等住宅支援資金貸付
住宅支援資金の貸付について記載されています。
4. ひとり親家庭等自立支援相談
就業や生活に関する相談窓口、弁護士による法律相談について記載されています。
母子・父子自立支援員による相談について、各区役所の担当窓口の連絡先が記載されています。
これらの支援制度は、お住まいの地域によって詳細が異なりますので、各自治体の窓口でご確認ください。新潟県や新潟市でも、さまざまなひとり親支援制度が用意されています。
専業主婦、パート主婦の離婚。まずは弁護士までご相談ください
「こんな状況でも、弁護士に相談していいのかな?」「費用が心配…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご自身の状況を正確に把握し、最適な解決策を見つけるためには、専門家である弁護士の力を借りるのが一番の近道です。
弁護士は、あなたに代わって複雑な交渉や法的手続きを代行し、あなたの正当な権利を守ります。離婚後の生活を経済的に安定させるため、どのようなお金を、いくら、どのように受け取れるのかを明確にすることができます。
当事務所では、初回相談を無料で行っております。どうぞお一人で悩まず、まずは一度、お気軽にご相談ください。あなたの新しい人生の第一歩を、私たちが全力でサポートします。
