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【個人事業主の離婚で問題となりやすいこと】
個人事業主の離婚において、給与所得者(会社員)の離婚と比較した場合に最も大きな違いは、「収入の算定」と「財産の切り分け」の難しさにあります。会社員であれば源泉徴収票で収入が明確ですが、個人事業主の場合は確定申告書等の資料から実質的な収入を計算し直す必要があります。これは、婚姻費用や養育費の算定に直結する重要なポイントです。
また、事業用の資金と生活費が明確に分かれていないケースや、配偶者が事業を専従者として手伝っているケースも多く見られます。このような場合、どこまでが夫婦の共有財産であり、どこからが事業用財産なのか、財産分与の前提となる線引きが大きな争点となります。
さらに、配偶者を青色事業専従者として申告している場合、離婚に伴い専従者給与の支払いや業務の継続をどうするのかといった問題も生じます。例えば、当事務所でこれまで取り扱った事案では、配偶者の専従者給与として税務上計上していながら、実際には給与が支払われていなかった場合の処理が問題となりました。
個人事業主は、株式会社と異なって小規模な事業であることが多いことから、離婚問題の影響を受けることによって、事業の存続自体が危ぶまれる事態に発展することもあるため、離婚協議と並行して事業への影響を最小限に抑えるリスクヘッジが求められます。このように個人事業主の離婚では、事業特有の事情を考慮した多角的な法的主張が必要不可欠です。
【個人事業主に特有の財産は?財産分与における注意点】
財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦の協力によって形成された「実質的共有財産」です。財産分与について規定する民法762条1項は「婚姻中自己の名において得た財産は、その特有財産とする」と定めていますが、判例(最高裁昭和55年12月16日判決等)は名義にかかわらず実質的な形成過程を重視します。
個人事業主の場合、店舗、機械設備、在庫商品、売掛金などの事業用財産が分与対象に含まれるかが問題となります。原則として、事業用財産であっても、婚姻中に夫婦の協力(配偶者の家事労働による内助の功を含む)によって取得・維持されたものであれば、実質的共有財産として分与の対象となり得ます。
しかし、事業用資産をそのまま現金化して分割することは事業の継続を困難にするため、通常は事業主側が資産を保持し、その評価額の半額を代償金として配偶者に支払う方法がとられます。この際、事業用資産の適正な評価(時価評価等)や、買掛金や事業用ローンなどの「消極財産」をどのように控除するかが実務上激しく争われます。事業と家計の線引きを精緻に行い、適正な対象財産を確定させることが解決の鍵となります。
【個人事業主の離婚と親権で問題となりやすいポイント】
未成年の子がいる場合の離婚では、親権者を定める必要があります。親権者の指定においては、「子の利益(民法820条等)」が最優先され、継続性の原則、監護に向けた状況、子の意思などが総合的に考慮されます。
個人事業主が親権を争う場合、メリットとデメリットの双方が存在します。メリットとしては、働く時間や場所の裁量が比較的大きく、子育ての時間を確保しやすい(在宅ワーク等)と評価される可能性があります。一方でデメリットとしては、収入が不安定になりがちであることや、繁忙期には深夜や休日も稼働せざるを得ず、安定した監護環境を維持できるか疑問視される懸念があります。
裁判所は、単なる収入の多寡よりも、「実際に誰が主たる監護者として子の世話をしてきたか(監護の実績)」や「離婚後の具体的な監護補助者(祖父母等)の有無」を重視する傾向にあります。したがって、個人事業主が親権を獲得するためには、事業の特性を活かして柔軟に子育てに関わってきた実績を客観的な証拠とともに主張し、離婚後も子の健全な成長に資する安定した監護環境を提供できることを具体的に立証することが重要です。
これまで当事務所で個人事業主である妻から依頼を受けた離婚事件において、子の親権の取得を希望する夫側から、妻が個人事業主であることから、生活基盤が不安定であるから親権者として不適格だ等と指摘を受けたことがありました。しかしながら、その事案では、個人事業主でも子育ての時間を確保しやすい労働環境であることや、これまで子の養育に十分な収入を確保してきたこと等を丁寧に主張し、子の親権を獲得することができました。
【個人事業主の養育費の計算方法】
養育費は、子が自立するまでに必要な費用であり、親の生活水準と同等の生活を保障する義務(生活保持義務)に基づくものです。その算定は、実務上、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表(改定標準算定方式)」を用いるのが原則です。
算定表では給与所得者と自営業者で基準が異なります。個人事業主の基礎収入を算出する場合、確定申告書の「課税される所得金額」をそのまま用いるわけではありません。税法上は控除されているものの、実際には支出されていない費用(青色申告特別控除額、基礎控除、配偶者控除、生命保険料控除等の各種控除)や、事業に直接関係のない経費を「課税される所得金額」に加算して(戻し入れて)、真の収入を割り出す必要があります。
さらに、売上を意図的に過少申告している、あるいは不必要な私的経費を事業の経費として計上している疑いがある場合には、預貯金口座の履歴や総勘定元帳等の帳簿類を精査し、実際の収入を立証しなければなりません。このように、個人事業主の養育費算定は複雑であり、適切な金額を導き出すためには税務・会計の知識と法的裏付けに基づく主張が不可欠です。
【個人事業主の離婚についての当事務所のサポート】
当事務所では、個人事業主の皆様が抱える特有の離婚問題に対して、専門的な見地からトータルサポートを提供しております。事業と家計が混然一体となっているケースにおける精緻な財産調査や、確定申告書・帳簿類を分析した適正な基礎収入の算出は、一般の方には非常に困難です。
当事務所の弁護士は、多数の離婚事件を解決してきた実績に基づき、相手方に対する説得力のある法的主張を構築してまいります。また、事業主の方からのご相談であれば「事業の継続を阻害しないための柔軟な解決策(代償金の分割払い交渉等)」を、配偶者の方からのご相談であれば「隠し財産の発見や不当な経費計上の是正」を徹底して追求します。
離婚事件は、感情的な対立から当事者間の協議が平行線をたどることも少なくありません。当事務所にご依頼いただくことで、弁護士が窓口となって相手方と交渉し、精神的な負担を大幅に軽減するとともに、将来に禍根を残さない適正な解決を目指します。まずは、お早めに当事務所の初回相談をご利用ください。
